Pass The Message

必然の自然体

第20回目の「人生の旅」メッセージは、安江佐和子さんからのメッセージです。
<斎藤友子さんからのリレーバトンが安江佐和子さんへ>
それではメッセージ、スタート!!

リレー・エッセイのバトンを渡して下さった斎藤友子さん、その前の廻由美子さんも私の音楽人生の中で
なくてはならない出会いの人です。
斎藤友子さんの愛すべき作品は、私の大切なレパートリー。
そしていつもお客様に幸せを運んでくれます。

私はパーカッショニスト(打楽器奏者)です。
パーカッション(打楽器)って何?と思われるでしょうか。
叩くもの全て打楽器。私はクラシック音楽オーケストラで使われる打楽器から現代音楽まで、
民族楽器を含めてありとあらゆる楽器を演奏します。
その数は・・数えたことないですが100種類は超えるかもしれませんね!

6歳の時、母の勧めでマリンバと小太鼓を習い始めました。
最初から打楽器を個人レッスンで始めるケースは稀で、しかも6歳からというのは今でも珍しい方です。
その、最初の先生(井上文子先生)が私の人生を決定づけた方でした。
小さい私を前に「将来のことを考えると、マリンバだけではダメ。全ての打楽器を演奏できるようになったほうが良いでしょう」と、
どのぐらい続くかもわからない子供相手に将来を見据えた大きなお話をしてくださったことを、今でも忘れないと母は言います。
それがまさに私の打楽器人生のスタートでした。
しかし、始まったそのレッスンは大変厳しいものでした。先生は子供用のレッスンをしない、
音大生やプロを相手にするような妥協のない厳しさで私に接してくださいました。
子供だからといって「ハイ!よくできました~ ハナマル~ シール貼りましょうね~」なんていうレッスンは1度もなかったですから。
徹底的な“基礎”を小学生のうちに叩き込まれました。
今、そのことに感謝する日々です。演奏というものは(何でも同じだと思いますが)基礎が命。
常に「基礎にかえる」が大事なことです。

その後も受験に向けて、先生の紹介で別の先生にも習うことになります。
この先生からは音楽の楽しみ、喜びを教えて頂きました。
音楽のレッスンだけではない、楽譜の製本の仕方、楽器の扱い方、楽譜の書き込みの仕方など細かいところまで、
身体の一部のような楽器や道具や楽譜をどれぐらい綺麗に大切に扱うか その精神「こころ」を教わりました。
たくさんの思い出が溢れています。愛情をもって育てて頂きました。
しかし、早くもお別れの時が訪れました。
昏睡状態である先生の病床に生で聴いて頂けなかったブルガリア民謡”告白”(マリンバで演奏)の初演の
録音をかけさせて頂きました。
すると、それまで眠られていた先生が大きな目を開き、声を出されたのです。奇跡のような出来事でした。
しかし本当にそれが最後でした。その3日後、53歳という若さで先生は旅立たれました。
先生はその演奏を聴いてくださったのだと思っています。
その後、ブルガリア民謡“告白”は4年ほど その辛い思い出に演奏する気になれず、楽譜もしまい込んでいました。
しかし、ある時ふと「弾かなきゃいけない!」と思い、その後現在まで狂ったように毎回のコンサートで弾いています。
お客様からは「不思議な力をもった音楽ですね」「涙が溢れてとまらなかった」とよく言われます。
そして、先生が亡くなられてちょうど10年目に「これは残さなければいけない!」と強く思わされ(天の声かもしれません)、
CDレコーディング その曲のタイトル「告白」としてCDリリースとなりました。

人との出会い、時に別れ、そして作品との出会いで私の音楽人生があります。
この曲は一生涯、弾き続けることになるでしょう。

そして、音を出すこと演奏することは「自然体」であることだということに今は辿り着いています。
ただ漠然と、単なる開放的な「ボ~っとした自然体」という意味ではなく、
一音一音に必然性のある「自然」なのです。
作曲家は一音一音必然な音しか楽譜に込めていません。
それを演奏するには「必然的な音」を出さなくてはいけないのです。一音残らず!
それにはツクリモノのかたちではなくて、もっとも身体と動きが自然であり、その音にふさわしい
「必然の自然」が常にあるものだと思っています。
自分の力だけで音楽ができるものでもありません。それはエゴに過ぎない。
自分自身以外の外の力を借りて、それと共に内なる力と総合して音が生み出されるものであると信じています。

時にはその音を出すことに震え、寝食を忘れて取り組むこともあります。
そんな体験が出来る人生を与えてくださった両親と先生方に、感謝する日々です。

何かに命がけで取り組むことができたら幸せなことですね!
きっとみなさんも命をかけて取り組む何かに出会い、
家族、先生、友達、与えられたチャンス!に感謝することがあると思います。
一度だけの人生、“本気”で取り組んでください!

次のバトンは世界的オペラ歌手 天羽明恵さんへお渡しします!
世界を駆け巡る天羽さん 音楽、精神面でもいつも支えて頂いている
尊敬する大好きな輝いているアーティストです!

2010/12/02
安江佐和子

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プロフィール: 安江佐和子 Sawako YASUE(パーカッション)

http://sawako-percussion.com/

6歳よりパーカッション、マリンバを始める。

桐朋学園大学音楽学部附属子供のための音楽教室、
同高校を経て同大学卒業、同研究科修了。

マリンバを安倍圭子氏に、打楽器、ティンパニーを井上文子、岩沢康裕、小林美隆、佐野恭一、
上野信一、ライナー・ゼーガ-ス、ヴィック・ファース、宮崎泰二郎の各氏に師事。

在学中、1991ミュンヘン国際音楽コンクール奨励賞受賞。

1995、96、99年マリンバ・パーカッションソロリサイタル「Prana~息」開催

1997ピアノ野平一郎、廻由美子、打楽器 佐野恭一と共に、
バルトーク「二台のピアノと二人の打楽器奏者のためのソナタ」をビクターよりCDリリース。

1995よりサイトウ・キネンオーケストラ(小澤征爾指揮)のメンバーとして活動。

2001.1月同オーケストラによるアメリカツアーに参加。ドイツ・バッハゾリステン日本公演、
並びに2001.2月 小澤征爾指揮・水戸室内管弦楽団ヨーロッパツアーにティンパニー奏者として出演。

2001ソリストとして新星日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団と共演。

2002.9月より文化庁芸術家海外研修員としてベルリンへ留学。
ベルリンフィルハーモニーソロティンパニー奏者ライナー・ゼーガ-ス氏に師事。
帰国後、2004~2007.3月 東京フィルハーモニー交響楽団入団、打楽器奏者として活動。

2004久石譲全国ツアーにコンサート及びCDレコーディングにソロパーカッションとして参加。

2007.4月 アルゲリッチ音楽祭にて「兵士の物語」Cl.ポール・メイエ、
Tp.セルゲイ・ナカリャコフ、Vl.豊島泰嗣らと共演
5月ラ・フォル・ジュルネにてオープニングコンサート、室内楽などの公演に出演。

2008.7月東京オペラシティにてソロリサイタル「砂漠の声」2日公演。ドラマー村上ポンタ秀一氏と共演。

2010ソロリサイタル2日公演開催。構成から演出、演奏まで、そのトータルパフォーマンスを高く評価される。

現在、桐朋学園大学非常勤講師、サイトウ・キネン・オーケストラ。

新作、委嘱作品の初演、現代作曲家個展での演奏及びレコーディングは数多く、
パーカッション・マリンバのソリスト、ティンパニー奏者としてその活動はソロ、アンサンブル、オーケストラと幅広く、
古典から現代まで様々なレパートリーをもつ。
リズムを超えた「音楽」を求め、歌う、色彩のパーカッションとして、独自の音色感をもった世界を広げている。

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